[古典名詩] 同崔邠登鹳雀楼 - 詩の概要

Ascending the Stork Tower with Cui Bin

同崔邠登鹳雀楼 - 韦应物

同崔邠登鹳雀楼 - 韋応物

高楼から眺める広野と断山に映える壮観

迥臨飛鳥上
はるかに飛ぶ鳥のさらに上へ臨むかのように
Gazing far beyond, as though standing above the soaring birds
高出世塵間
俗世の塵から高く抜け出したかのごとく
Rising above the dust of the mundane world
天勢圍平野
天の勢いは広大な平野をぐるりと囲み
Heaven’s might encircles the vast plains
河流入斷山
大河は切り立つ山の裂け目へと流れ入る
The mighty river courses into the cleft of rugged mountains
孤雲與歸鶴
一片の雲と帰巣する鶴は
A lone cloud and a returning crane
千里頃時還
千里の遠方をひとときのうちに飛び戻る
In but a moment, traverse a thousand leagues to return
無事因眺望
わずらいなき身をもって物思いにふけりながら眺め
Free from cares, gazing deep in thought
所思不可攀
憧れるものはあまりに高く、とても手が届かない
The longing that stirs lies far beyond my grasp

この詩は、韋応物が友人の崔邠とともに鹳雀楼(かんじゃくろう)と呼ばれる高楼に登った際に詠んだ八句の七言詩です。詩人は遠く飛ぶ鳥よりもさらに高所へと登った自分たちの位置づけを強調しながら、塵世から隔絶されたような壮大な視界を捉えています。天の勢いが広野を取り囲み、大河が険しい山々へと流れ込む様子は、宇宙の秩序を感じさせる大らかな景観として描かれています。

また、孤雲と帰巣する鶴が千里を一瞬で行き来する様子は、広大な天地を自在に舞う自由さを象徴し、詩人自身が抱く悠遠の思いを重ねているようにも読めます。最後には、人間の思いが高く遠く、そう簡単には届かないことを嘆じるような余韻が残され、広い空間と深い内面が呼応する構成になっています。

唐代の楼閣詩は、しばしば高所からの眺めを通じて心境や抱負を描くことが特徴的です。韋応物もまた官僚として各地を転々とし、その過程で自然や社会を観察しながら多くの詩を残しました。本詩では壮大な自然描写を交えつつ、最後に人間の限界を感じさせるような一抹の寂しさを滲ませる点に、一種の哲学的な含みがあるといえます。登楼の行為そのものが、人生や官途を俯瞰する行為の暗喩ともなり、読者に思索を促す名品となっています。

単に風景を描写するだけでなく、人の想いと自然との対比・融合が韋応物の詩風を示す好例です。読後には、ただ美しい風景を見下ろしているのではなく、何か届かぬものへ向かう思いが奥底で静かに燃えているのを感じ取ることができるでしょう。

要点

・遠く飛ぶ鳥より上に立つ視点から、壮大な眺望を描く
・天、河、山など大自然の要素と人間の思いが呼応する
・自由に往来する孤雲や鶴と、届かぬ思いとの対比が印象的
・登楼詩における高所からの人生観や内面性の表現が凝縮された一作

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