[古典名詩] ヒバリへ - 詩の概要

To a Skylark (Wordsworth)

To a Skylark (Wordsworth) - William Wordsworth

ヒバリへ - ウィリアム・ワーズワース

翼なきまま天空へ誘う魂の讃歌

Up with me! up with me into the clouds!
さあ、私と共に! 私と共に雲の上へと舞い上がれ!
For thy song, Lark, is strong;
ヒバリよ、お前の歌声は力強いのだから;
Up with me, up with me into the clouds!
私と共に、私と共に雲の上へ上ろう!
Singing, singing,
歌いながら、歌いながら、
With clouds and sky about thee ringing,
周りを囲む雲と空が、お前の調べを反響させている、
Lift me, guide me, till I find
私を引き上げ、導いてくれ、その場所を見いだすまで、
That spot which seems so to thy mind!
お前の心がとらえるあの高みを!
I have walked through wildernesses dreary
私は荒涼たる荒野を歩いてきた、
And to-day my heart is weary;
そして今日、心は疲れ切っている;
Had I now the wings of a Faery,
もし今、妖精のような翼があれば、
Up to thee would I fly.
お前のもとへ飛んでいくことができるのに。
There is madness about thee, and joy divine
お前の周りには狂おしいまでの歓喜があり、神々しい喜びがある、
In that song of thine;
お前のその歌声の中に;
Lift me, guide me, high and high
私を引き上げ、導いてくれ、高みに、さらに高みに、
To thy banqueting-place in the sky.
あの空の宴の場へ連れて行ってくれ。
Joyous as morning,
朝のように喜びに満ちて、
Thou art laughing and scorning;
お前は笑い、そしてあざけるかのようだ;
Thou hast a nest for thy love and thy rest,
お前には愛と憩いのための巣があり、
And, though little troubled with sloth,
怠惰に悩まされることもほとんどない、
Drunken lark! thou would’st be loth
酔いしれたヒバリよ! お前は嫌がるだろう、
To be tamed from thy heaven by the cage of the earth.
大地という檻によって、天上から飼い馴らされることを。
Up with me, up with me into the clouds!
さあ、私と共に、私と共に雲の上へ昇るのだ!
For thy song, Lark, is strong;
ヒバリよ、お前の歌は強靱な響きを持つ;
Up with me, up with me into the clouds!
私と共に、私と共に雲へ上ろう!
Singing, singing,
歌いながら、歌いながら、
With clouds and sky about thee ringing.
雲と空が、お前の声をこだまするその中を。
Lift me, guide me, till I find
私を高みへ連れ、導いておくれ、見つけるまでは、
That spot which seems so to thy mind!
お前の思うあの天空の場所を!

ウィリアム・ワーズワースの「To a Skylark(ヒバリへ)」は、空高く舞い上がり、力強く歌うヒバリに向けた賛美と憧れを表す詩です。地上にいながらも、詩人が“雲の上”へと誘うように呼びかける歌声に魅せられ、自分も同じ高みに到達したいという切実な思いが詩全体を貫いています。

冒頭で、詩人は「Up with me! up with me into the clouds!」と繰り返し呼びかけます。この一節からは、ヒバリの歌がもたらす“超越”のイメージが色濃く感じられ、現実世界の荒涼や疲弊から抜け出して、より高次元の世界に身を置きたいという願いが伝わってきます。実際、詩の中盤で“wildernesses dreary”と表現されるように、詩人が置かれた現実は憂鬱や倦怠に彩られたものですが、ヒバリの歌声はそれを一瞬にして忘れさせ、空へ連れ去ってくれる魔力を帯びているのです。

また、ヒバリを“Drunken lark!”と呼ぶ場面も印象的です。これは、ヒバリがまるで天上の喜びに“酔っている”かのように自由奔放に羽ばたいている姿を示唆します。同時に、大地という“檻(cage)”から離れ、束縛のない空を自在に飛び回る姿が、詩人にとっては人間には実現しがたい解放感の象徴として映るのでしょう。そこには、人間の抱える重荷や日々の雑多な苦労から解放されたいという潜在的な欲求が、ヒバリの姿と重なって表現されています。

ワーズワースはロマン派を代表する詩人として、自然との一体感や、自然から得られる精神的高揚を繰り返し作品のテーマにしてきました。本作でも、ヒバリという自然の小さな存在の中に、彼が求める“超越”や“精神の回復”のすべてが凝縮されています。詩人がヒバリに強く惹かれるのは、まさに自然が持つ純粋で力強いエネルギーを感じ取り、自分もその流れに加わりたいと渇望しているからです。

さらに、詩の最後でも繰り返される「Up with me! up with me into the clouds!」という呼びかけが、この詩のメインテーマを象徴的に締めくくります。どこまでも続く空と雲のあいだに響き渡るヒバリの歌は、現実世界の苦悩を超え、魂が高みに昇るための導き手となっているのです。こうした“自然”を媒介にした精神的上昇への憧れこそ、ワーズワースが詩を通じて伝え続けたロマン派的な思想の核でもあります。

総じて「To a Skylark」は、自然美と崇高さを讃え、そこから得られる内的変容と自由を追い求める詩人の情熱が凝縮された作品です。ヒバリが象徴する“歌う喜び”と“限りない解放感”は、人の生きる力や創造力を呼び覚まし、読者にも想像上の翼を与えてくれるかのように感じられます。

要点

・ヒバリを通じて自然から得られる解放感と精神の高揚が描かれ、ロマン派詩人が理想とする“超越”を象徴している。
・重苦しい現実や倦怠感から離れ、“雲の上”を目指すことで、人が内面の力を再生する道を示唆している。
・小さな鳥であっても、天上の歌声は詩人や読者の魂を大きく揺さぶり、自然の持つ力強い美と自由を鮮明に表す作品。

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