[古典名詩] 农家叹(のうかたん) - 詩の概要と背景

A Farmer’s Lament

农家叹 - 陆游

农家叹(のうかたん) - 陸游(りくゆう)

田畑に宿る疲弊と民の嘆きを映す率直な詩

辛苦耕耘谁肯知,
苦労して田畑を耕す日々、いったい誰がその苦しみを知ろう。
Who truly understands the toil and hardship of endless farming?
布衣草履度四时。
粗末な衣と草履で、四季を辛うじて乗り切っている。
Clad in simple garments and straw sandals, they endure all four seasons.
鸟鸣山远仅糊口,
山奥で鳥が鳴くも、耳に入るのは日々の糧を得る手段の乏しさばかり。
Though birdsong echoes from distant hills, survival still teeters on the edge.
租税催急不容迟。
租税の取り立ては厳しく、猶予など許されない。
Tax collectors come hastily, leaving no room for delay.
朝盼东风雨初霁,
朝には東風が吹き、雨上がりを願いつつ、
At dawn, they hope for the eastern wind to clear the rain-soaked fields,
夜听风籁露盈池。
夜には風の音に耳を澄ませば、露に満ちた池のたゆたいが聞こえてくる。
At night, the rustling breeze and the dew-filled pond compose a gentle lullaby.
短债长债年年积,
返しきれぬ借金は積もり積もって年を越し、
Short-term and long-term debts accumulate with each passing year,
白头犹苦忧农期。
白髪になるまで農期の不安に苛まれるばかりだ。
Until white hairs appear, they fret over the uncertain farming seasons.

「农家叹(のうかたん)」は、南宋の詩人・陸游(りくゆう)が農村の困窮や農民の嘆きを率直に描き出したとされる作品です。彼は愛国詩人として名高く、失地回復への熱い情熱を多くの作品で語りながらも、そのいっぽうでは市井の暮らしや自然の美しさを詠んだ詩も多く残しています。本作では、名声の裏に潜む民衆の実態に寄り添う視点がうかがえ、政治や軍事の大舞台から離れた“日々の生活”を鋭く捉えているところに特徴があります。

冒頭の「辛苦耕耘谁肯知」は、農作業という重労働を淡々とこなす農民たちの姿勢を示しつつ、その実情を理解してくれる者の少なさを嘆いています。続く句で「布衣草履」という質素な身なりが強調されることで、農民が直面する貧苦や不安定な生活基盤がさらに強調されます。さらに租税の取り立てが容赦なく、自然条件の変化にも翻弄され続ける日常が描写されるにつれ、農民が背負う負担の重さが痛切に伝わってきます。

後半では、季節の移ろいに多少の希望を抱きつつも、最終的に借金の山に追われ続け、白髪になるまで安寧を得られない農民の悲哀が描かれています。こうした農村の厳しい実態は南宋の時代背景と無縁ではありません。戦乱や財政難により農民への税負担は増し、貧富の差は拡大していました。陸游は官僚としても民衆の暮らしに触れる立場であったため、この詩には実体験に基づく迫真性がにじみ出ています。

陸游の詩風には、一方で華麗な描写や激しい感情が前面に出る作品も多く見られますが、本作ではむしろ抑制が効いた語り口で、農民の苦難と自然の恩恵、そして社会的圧迫の構造を静かに浮き彫りにしています。政治や軍事への大いなる情熱を持ちながらも、一方で目の前の暮らしに苦しむ人々に深い共感を寄せた陸游の人間性が映し出された詩と言えるでしょう。

要点

・農民の生活苦を、具体的な描写を通じて率直に描くことで強いリアリティを生み出している
・租税の取り立てや借金、自然条件に左右される農民の苦労が作品全体に漂う哀愁を強調
・陸游の政治的・軍事的な愛国主義の一方で、民衆生活への共感や観察眼を示す貴重な一篇

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