Twilight on the River - Bai Juyi
/暮江吟 - 白居易/
Twilight on the River - Bai Juyi
/暮江吟 - 白居易/
この詩は、唐代の詩人・白居易が秋の夕暮れ時の川辺で目にした光景を、わずか四句の中に凝縮して表現した作品です。題名の「暮江吟(ぼこうぎん)」が示すとおり、暮れなずむ川の風景を対象に、色彩や時刻の移ろいを印象的に描き出しています。
第一句の「一道残陽鋪水中」は、夕日の名残が水面を一筋の光として照らしている場面を提示します。光が水平に広がる様子は、一日の終わりとともに訪れる一抹の寂しさや、美しさを感じさせます。次の「半江瑟瑟半江紅」では、川の一方は青みがかった色彩、もう一方は紅色に染まるという対照的な光景を描き、視覚的なコントラストを鮮やかに強調しています。
第三句「可憐九月初三夜」は、旧暦の九月三日の夜という具体的な時期を指し示し、その日は秋の深まる頃合いを暗示します。秋の清らかさと少しもの悲しい空気感が、川辺の寂寥と相まって印象を深めます。最後の「露似珍珠月似弓」では、露が真珠のようにきらめき、月が弓なりに細くかかる姿を描き、同時に冷涼な空気と凛とした趣が伝わってきます。
四句にわたる景色の描写は単純なようでいて、残陽と秋夜、青と赤の色彩コントラスト、露と月など、多彩な対比を巧みに盛り込んでいるのが特徴です。白居易は平易な言葉遣いとわかりやすいイメージを得意とした詩人であり、この作品も短い中で強い視覚効果と情緒を作り出しています。秋の夕暮れという限られた時間と場所の中に、自然の美しさともの憂げな感傷が同時に存在するところに、中国古典詩の醍醐味を感じることができます。
『暮江吟』は、唐詩の名篇の一つとして広く親しまれており、夜の闇へと移りゆく直前の微妙な光の変化を詩人の鋭い感受性が捉えている点が高く評価されています。短いながらも、読むたびに異なる表情を見せる秋の川辺の情景と、人の心に起こる感傷の入り混じった美しさを味わうことができる作品です。
・夕日の消えゆく瞬間と川面の色彩の対比
・秋の夜へ移行する一抹の哀愁と美しさ
・短い詩句の中に視覚的・感覚的要素を凝縮
・白居易特有の平易さと叙情性が際立つ
・自然美と人の心情が交わり、深い余韻を残す一篇