[古典名詩] ソネット:オッター川に寄せて - この詩の概要

Sonnet: To the River Otter

Sonnet: To the River Otter - Samuel Taylor Coleridge

ソネット:オッター川に寄せて - サミュエル・テイラー・コールリッジ

故郷の流れに揺れる追憶の詩情

Dear native brook! wild streamlet of the West!
おお、愛しき故郷の小川よ! 西の野に荒々しく流れるせせらぎよ!
How many various-fated years have passed,
どれほど多くの運命を背負う歳月が通り過ぎただろう、
What happy and what mournful hours, since last
前回ここを訪れてから、歓びのときも悲しみのときも重ねてきた、
I skimmed the smooth thin stone along thy breast,
お前の水面を、軽く平たい石を投げて滑らせたあの頃から。
Numbering its light leaps! yet so deep imprest
その軽やかな跳躍を数えたものだ! それでもなお、深く刻まれ、
Sink the sweet scenes of childhood, that mine eyes
幼少期の美しい光景は、私のまなざしに沈殿してやまない、
I never shut amid the sunny rays,
陽光のもとで目を閉じるたび、
But straight with all their tints thy waters rise,
さまざまな色彩を帯びて、お前の川面がまざまざと甦ってくるのだ、
Thy crossing plank, thy marge with willows grey,
渡し板や、灰色の柳が立ち並ぶ川辺が目に浮かび、
And bedded sand that, veined with various dyes,
多彩な筋が通った砂が敷かれ、
Gleamed through thy bright transparence! On my way,
お前の澄んだ透明さを通してきらめいていた! 旅路の途中でも、
Visions of childhood! oft have ye beguiled
幼少期の幻影たちよ! どれほどお前らは私の孤独な大人の日々を
Lone manhood’s cares, yet waking fondest sighs:
和らげてくれたことか、それでもなお愛しさに満ちたため息を誘う:
Ah! that once more I were a careless child!
ああ、もう一度、あの無心な子どもに戻れたらいいのに!

「Sonnet: To the River Otter(ソネット:オッター川に寄せて)」は、サミュエル・テイラー・コールリッジが青年期に過ごした故郷の川を懐かしみ、その記憶を詩情豊かに描いた作品です。故郷の川は、詩人にとって幼い頃の純粋な思い出の象徴であり、人生のさまざまな運命を経た後でもなお、鮮やかに脳裏に甦ります。石を投げて川面を跳ねさせた無邪気な遊びや、川辺の光景をくっきりと思い出す様子が、濃密なノスタルジーとともに語られているのが特徴です。

この作品におけるロマン派的な要素は、自然との深い結びつきと幼少期の思い出が結晶化している点に表れています。コールリッジの詩作にはしばしば自然が内面風景を映し出す鏡として登場しますが、本作では特に、過去と現在をつなぐ回想の場として川が登場し、失われたものへの切なさや、もう一度あの無心な子どもに戻りたいという願望が秘められています。

同時に、ソネット形式の緊密さが、彼の抒情的な思い出を適度に引き締め、わずか14行の中に繊細な感慨が凝縮されているところも魅力です。詩の後半に向かって「Visions of childhood(幼少期の幻影)」がもたらす慰めや、成長とともに失われていくものへの愛惜が強く感じられ、ロマン派の根幹をなす“自然への郷愁と回想”が清らかに表現されています。

要点

・幼い頃に馴染んだ川の記憶をとおして、失われた無心さや純粋さを切実に懐かしむ。
・ロマン派独特の“自然と個人の深い結びつき”が、川の風景に強く投影されている。
・ソネット形式の抒情詩として、限られた行数にノスタルジックな感情が凝縮され、読む者に細やかな感動を与える。

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