[古典名詩] 夜鳴き鳥(会話詩) - この詩の概要

The Nightingale (A Conversation Poem)

The Nightingale (A Conversation Poem) - Samuel Taylor Coleridge

夜鳴き鳥(会話詩) - サミュエル・テイラー・コールリッジ

星明かりの森で語り交わす夜鳴き鳥の調べ

No cloud, no relique of the sunken day
雲はなく、沈みゆく日の名残りも見られず
Distinguishes the west; no long thin slip
西空を彩る薄い光の残照もなく
Of sullen light, no obscure trembling hues.
くすんだ揺らぎやかすかな色彩さえ見えない
And mark the minster’s gray spire rising up
見よ、大聖堂の灰色の尖塔が闇にそびえ立ち
Behind the broken line of fading trees;
その背後では、色あせていく木々が途切れ途切れに並ぶ
And yonder fancy’s tender frame hath reared
向こうには幻想的なかすかな輪郭が立ち昇り
The Mother Bird that had her nest behind
その背後に巣を持つ母鳥がそっと身を置いている
And she shall feed them on the midnight dew,
夜露のしたたる真夜中に雛を養うのだろう
While glow-worms flit amid the grassy gloom;
ホタルの淡い光が草陰の闇を舞うあいだ
And shed a tear or two when they shake off
そして、一陣の風に枝が揺れ落ちるときに涙を一、二滴こぼしながら
Their early dew. O Nightingale! thou surely art
朝露を払い落とす夜明け前、ああ、夜鳴き鳥よ!お前はまさに
A creature of a ‘fiery heart’:—these notes
灼熱の心を持つ存在なのだろう:—この歌声は
Of thine they pierce and pierce who hear them all
耳にする者の胸を深く、また深く突き刺す
Lightly as morn’s first quickening breezes do
まるで朝のやわらかな風が
The ocean-foam, under the new sun’s beam,
生まれたばかりの太陽の光を受けて海面の泡をそっとかき分けるように
Spreading the field once more around the bank
川岸を囲む野をもう一度取り戻しながら
Of orchard plots. My Friend, and thou, our Sister!
果樹園の区画が広がるあたりを。わが友よ、そしてあなた、わたしたちの姉妹よ!
We have learned
私たちは学んだのだ
A different lore: we may not thus profane
そのようにして軽々しく言えないと
Nature’s sweet voices, always full of love
自然の甘美な声は、いつだって愛に満ち溢れていて
And joyance! Tis the merry Nightingale
それは陽気な夜鳴き鳥の仕業なのだ
That crowds, and hurries, and precipitates
その声はあふれ出し、せき立て、いっそう促してくる
With fast thick warble his delicious notes,
速くこまやかなさえずりが心地よい調べを紡ぎ出し
As he were fearful that an April night
まるで、四月の夜が短すぎて
Would be too short for him to utter forth
十分に歌い尽くせないとでも言うかのように
His love-chant, and disburthen his full soul
愛の歌を捧げ、溢れんばかりの魂を放出しているかのようだ

「The Nightingale(A Conversation Poem)」は、サミュエル・テイラー・コールリッジによる“会話詩”シリーズの一つで、夜の情景と夜鳴き鳥のさえずりをめぐる自由な対話を通して、自然や詩、そして愛を語り上げる作品です。1798年頃に書かれたとされ、同時期に書かれた「Frost at Midnight」や「The Eolian Harp」などと並び、コールリッジの初期ロマン主義の特徴が顕著に表れています。

詩の冒頭では、夜鳴き鳥(ナイチンゲール)の声が単に悲しみを帯びた音色として捉えられていた伝統的なイメージを否定し、“本来は愛と歓びのシンボルである”という見解を示すところから始まります。コールリッジは、夜鳴き鳥の声は悲哀というよりも、むしろ自然の溢れる活力や陽気さを表現していると捉え、そこにロマン派らしい“肯定的な自然観”が伺えます。

また本作は“会話詩”と呼ばれるように、1人の語り手が淡々と独白するのではなく、友人や家族と対話するような形をとっている点が特徴的です。作中では「わが友よ、そしてあなた、わたしたちの姉妹よ!」などと呼びかけが登場し、夜の森の散策や星の見える空を背景に、自然と人間、そして詩歌の関係性を探求していく姿が描かれます。

さらに、詩の中盤では、夜鳴き鳥の歌声があふれるように急かされるさまが鮮烈にイメージされ、限られた夜の時間内に情熱を余すことなく放とうとする姿が、人間の想像力や感性と重ね合わされているのです。最終的には、その自然の中で育まれる愛や喜びが、人間存在にとって根源的に尊いものであると再確認され、“悲しみの象徴”とされてきたナイチンゲール像を新たな視点で捉え直しています。

要点

・夜鳴き鳥の声を“悲しみ”ではなく“愛と歓び”の象徴として描き、伝統的イメージを刷新する。
・会話詩という形式で、友人や家族との対話を通じて、夜の自然や詩的想像力の意義を深く探る。
・ロマン派が重視する“自然と人間の肯定的交感”を体現し、人間が抱く情熱や愛が夜景の美しさと融合する姿が鮮明に表されている。

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