[古典名詩] 迎新春(げいしんしゅん)(上元啓節) - 詩の概要

Welcoming the New Spring (When the Lantern Festival Begins)

迎新春(上元启节) - 柳永

迎新春(げいしんしゅん)(上元啓節) - 柳永(りゅうえい)

華燈の夜に高まる歓喜と春の彩り

鸣玉锵金,广寒宫殿来仙乐。
玉を打ち金を鳴らすような音が響き、月宮のごとき殿より仙楽が降りそそぐ。
Jade chimes ring, and from palatial halls akin to the Moon Palace descends celestial music.
簇画烛、明花市,转艳小灯轮郭。
絵ろうそくが華やぎ、花市の光は一層あでやかに、小さな灯の輪郭を際立たせる。
Clustered painted candles brighten the flower market, vividly tracing the outline of small lanterns.
罗绮争游,欢涌市桥东陌。
美しい絹をまとった人々がこぞって行き交い、市橋の東の通りは歓声であふれている。
In ornate silk, crowds flock to the eastern avenue by the market bridge, overflowing with joyous voices.
端门望、万家灯火,竞指点、满楼红药。
端門を見渡せば、万家の灯火が輝き、競い合うように楼閣には紅の花が満ちているように見える。
From Duan Gate, myriad lights gleam as if contending, while red blossoms seem to fill the towers.
当此际、算妖娆春色,总来攀摘。
今このとき、艶やかな春の景色はすべて手に取るようにつかみたくなるほどだ。
At this moment, the bewitching splendor of spring seems ripe for plucking.
试把酒对花,遨游共佳客。
花を前に盃を酌み交わし、心のままに佳客とともに遊び歩こう。
Raise a cup among blossoms, roam freely in good company.
歌鼓喧、鸣珂细乐。
歌声と太鼓がにぎわい、玉飾りの鈴が細やかな調べを添える。
Songs and drums resound, while jade ornaments add a delicate harmony.
更看处、玉漏犹未滴。
さらに見れば、時を知らせる玉漏はまだ滴っておらず、夜は長く続く。
Still, the jade clepsydra has yet to drop, prolonging the night.
谁肯拘束家邦,且任绣毂香车,笑嘻春诺。
いったい誰が家に閉じこもっていられよう。錦の車輪や香り高い車に身を任せ、春を讃えて笑い合うのだ。
Who would remain confined at home? Let embroidered wheels and fragrant carriages roll on, laughing in the promise of spring.

柳永(りゅうえい)が詠んだ「迎新春(上元啓節)」は、上元(旧暦正月十五日)の夜に行われる華やかな灯火の祭りを背景に、春の到来を明るく歓喜にあふれた筆致で描き出した作品です。舞台となるのは満天の灯籠や人々の喧騒が渦巻くにぎやかな街中で、そこには月宮殿からの仙楽が響くかのような幻想的なイメージも織り込まれています。

まず冒頭では、玉や金が鳴り響く音が暗示するように、華麗で祝祭的な情景が開幕します。続く部分で、彩り豊かな絵ろうそくや花市が一層の活気をもって広がり、人々は美しい服装に身を包んで通りを埋め尽くす様子が伝わります。歓声や歌声、太鼓の響きとともに、遠くからは玉飾りの澄んだ音もかすかに聞こえてくる――そうした多彩な音や色彩が読み手の想像をかき立てるのです。

やがて視線は端門から見渡せる無数の灯火へと向かい、まるであちこちの楼閣が赤い花で満たされているかのように感じられます。そこに浮かび上がるのは、春色の妖艶さ。まさに「春を攀摘したいほどに心を奪われる」状態であり、続く詞句では「花を前に酒を酌み交わして、友人や客人と遊び歩く」といった、解放感に満ちた春宵の楽しみが鮮やかに描かれます。

夜の長さを告げる玉漏はまだ時を刻み始めておらず、人々はこの一夜を惜しみなく堪能します。家に閉じこもる気にはなれず、錦を飾った車や香り高い車に揺られながら、あたり一面のにぎわいを楽しんでいる様子が、明るい笑顔や弾む気配とともに伝わってきます。この作品には、柳永特有の優美な表現だけでなく、お祭りという晴れやかな場に乗せられた情熱と歓喜、そして春への期待感が詩全体に満ち溢れています。

当時、上元節の夜は火樹銀花と称されるほど多くの灯籠や花火で彩られ、男女が自由に行き来し、普段とは異なる賑わいと解放感が味わえる特別な祭りでした。柳永はそのにぎやかさと幻想性を、巧みな筆さばきと華麗な辞句で描き出し、読み手に臨場感あふれる春の宵の浮き立つような空気感を伝えています。視覚、聴覚、嗅覚まで刺激されるような言葉の選び方が、この作品の魅力を存分に高めていると言えるでしょう。

要点

・上元節の夜の華やかな灯籠や祭りの様子を、音と光の重層表現で鮮やかに描いている
・外面的な華やぎと内面的な春への期待感が織り交ざり、読者に喜びと高揚感を与える
・柳永の巧みな言葉選びが、五感に訴える臨場感あふれる祭りの風景を生き生きと表現している

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