[古典名詩] エクスタシー - 詩の概要

The Ecstasy

The Ecstasy - John Donne

エクスタシー - ジョン・ダン

魂と身体が交錯する秘儀的な合一を描く詩

Where, like a pillow on a bed,
まるで枕がベッドに寄り添うかのような場所で、
A pregnant bank swell'd up to rest
膨らみを帯びた土手が、安らぎをもたらしていた。
The violet's reclining head,
そこではスミレが傾くように頭を垂れ、
Sat we two, one another's best.
私たち二人は座っていた、互いに最良の存在として。
Our hands were firmly cemented
私たちの手はしっかりと結ばれ、
With a fast balm, which thence did spring;
そこから湧き出る不思議な香油が固着剤となっていた。
Our eye-beams twisted, and did thread
互いの視線は絡み合い、まるで糸のように紡がれ、
Our eyes upon one double string;
二つの目を一つの紐でつなぎとめるかのようだった。
So to'intergraft our hands, as yet
そうして私たちの手を重ね合わせ、
Was all the means to make us one,
二人を一つにする手段はそこにあった、
And pictures in our eyes to get
そして互いの瞳に相手の像を映しこみ、
Was all our propagation.
そこにこそ私たちの“生み出す力”があったのだ。
... (excerpt) ...
...(抜粋)...

ジョン・ダンの「The Ecstasy(エクスタシー)」は、男女の愛における“精神的合一”と“身体的結びつき”の関係を、形而上詩特有の知的かつ比喩的表現を駆使して描き出す長編詩です。冒頭では草むらに腰掛ける二人の恋人の静かな情景が提示され、それが次第に“魂”と“身体”という二重の次元で繋がり合うイメージへと発展していきます。

詩の前半では、お互いの眼差しが重なり合い、手を繋ぎ合うことで、まず精神的な絆が強調されます。ここで描かれるのは、人間同士の愛が単なる肉体的欲望を超えて“魂の結合”となり得るという確信です。一方で、詩の中盤から後半にかけては、“魂”の合一が現実世界で真に成立するには“身体”も不可欠であると説き、人間的な愛が精神と肉体の両面を通じて完成するとの主張が強まっていきます。

ダンはこの詩の中で、“愛”を“エクスタシー”――すなわち“自己を超え出る体験”として捉え、その神秘性と崇高さを浮き彫りにしています。それは同時に、神学的背景を感じさせる部分でもあり、人間の愛の在り方がどこまで高い精神的次元に到達できるかを問いかける内容になっています。精神と肉体の矛盾や対立を越えた統合が、愛の極致として鮮やかに提示されているのです。

要点

• 愛する二人の“魂と身体”の融合を、自然の中で静かに描き出す
• 視線や手の触れ合いといった具体的イメージで、精神的合一を象徴
• “エクスタシー”の概念を通じて、個我の境界を超える体験を探求
• ダンの形而上詩特有の思考の飛躍と高度な比喩が、愛の神秘性を深める名作

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