Paradise Lost (Book 5) - John Milton
失楽園(第五巻) - ジョン・ミルトン
Paradise Lost (Book 5) - John Milton
失楽園(第五巻) - ジョン・ミルトン
ジョン・ミルトンの長大な叙事詩『失楽園』の第五巻では、エデンの朝の穏やかな描写とともに、“天使ラファエル”が神の命を受けてアダムのもとへやってくる重要なエピソードが展開されます。前巻でサタンがエデンに侵入し、アダムとイヴの無垢な生活を脅かす伏線が張られましたが、この第五巻では、神が人間に“自由意志”と“警告”を与えることで、あえて誘惑の可能性を残していることが明らかになります。
本巻の冒頭では、楽園(エデン)の美しい朝の情景が細やかに描かれ、アダムとイヴが目覚め、祈りと労働を分かち合う平和な光景が描かれます。しかし、イヴが“奇妙な夢”を見たことが暗示され、次第に“人間の無垢”が破られるかもしれない不穏さが漂います。そこに天使ラファエルが登場し、アダムに向かって“神への従順”と“自由意志”の意義、そして天使がいかにして堕天したか(サタンの反逆)の話を伝えることで、いかに自らの意志と信仰を保つかを説き始めるのです。
ラファエルとアダムとの対話は、単なる神学的議論にとどまらず、“愛するイヴをどう導くべきか”という具体的な問題にも及びます。ここでミルトンは、人間同士の愛がいかに神聖なものであるかを強調すると同時に、誤った方向へ向かう危険性も指摘します。このように第五巻は、“純粋な生活の中に忍び寄る闇”と“神が与えた自由意志への責任”の物語を、鮮やかに描き出す一篇となっています。
• エデンの平和な朝とイヴの不吉な夢によって、“純粋さ”に迫る危機を予感させる
• 天使ラファエルが訪れ、アダムにサタンの反逆と自由意志の重大さを説く核心場面
• 人間の愛と信仰、そして神への従順が一体となった“理想”のあり方を示す
• サタンの企みが進行する一方で、神の警告によって“誘惑に打ち勝つ可能性”も残されるという緊張感が高まる