[古典名詩] 失楽園(第五巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 5)

Paradise Lost (Book 5) - John Milton

失楽園(第五巻) - ジョン・ミルトン

エデンを訪れる天使の警告と人間の自由意志が深く問われる巻

Now Morn her rosy steps in th' eastern clime
今や夜明けが薔薇色の足取りで東の空を彩り、
Advancing, sowed the earth with orient pearl;
大地に真珠のような光を撒き散らす。
When Adam waked, so customed, for his sleep
そんな朝に、アダムはいつものように目を覚ました。彼の眠りは
Was airy light, from pure digestion bred,
健やかな身体に養われた、ごく軽やかなものだったのだ。
And temperate vapors bland, which the only sound
節度ある穏やかな息吹、それはただ一つの音と共にあった
Of leaves and fuming rills, Aurora's fan,
葉のざわめきと立ち昇る小川の音、そして曙の風が 混じり合う世界の中に。
Lightly dispersed, and the shrill matin song
やがて静かに散っていき、朝を告げる澄んだ小鳥の歌声が
Of birds on every bough;
あらゆる枝々で響き渡っていた。
... (excerpt) ...

ジョン・ミルトンの長大な叙事詩『失楽園』の第五巻では、エデンの朝の穏やかな描写とともに、“天使ラファエル”が神の命を受けてアダムのもとへやってくる重要なエピソードが展開されます。前巻でサタンがエデンに侵入し、アダムとイヴの無垢な生活を脅かす伏線が張られましたが、この第五巻では、神が人間に“自由意志”と“警告”を与えることで、あえて誘惑の可能性を残していることが明らかになります。

本巻の冒頭では、楽園(エデン)の美しい朝の情景が細やかに描かれ、アダムとイヴが目覚め、祈りと労働を分かち合う平和な光景が描かれます。しかし、イヴが“奇妙な夢”を見たことが暗示され、次第に“人間の無垢”が破られるかもしれない不穏さが漂います。そこに天使ラファエルが登場し、アダムに向かって“神への従順”と“自由意志”の意義、そして天使がいかにして堕天したか(サタンの反逆)の話を伝えることで、いかに自らの意志と信仰を保つかを説き始めるのです。

ラファエルとアダムとの対話は、単なる神学的議論にとどまらず、“愛するイヴをどう導くべきか”という具体的な問題にも及びます。ここでミルトンは、人間同士の愛がいかに神聖なものであるかを強調すると同時に、誤った方向へ向かう危険性も指摘します。このように第五巻は、“純粋な生活の中に忍び寄る闇”と“神が与えた自由意志への責任”の物語を、鮮やかに描き出す一篇となっています。

要点

• エデンの平和な朝とイヴの不吉な夢によって、“純粋さ”に迫る危機を予感させる
• 天使ラファエルが訪れ、アダムにサタンの反逆と自由意志の重大さを説く核心場面
• 人間の愛と信仰、そして神への従順が一体となった“理想”のあり方を示す
• サタンの企みが進行する一方で、神の警告によって“誘惑に打ち勝つ可能性”も残されるという緊張感が高まる

シェア
楽しい時は時間が経つのが早いですね!
利用可能な言語
おすすめ動画
more