Night Rain Sent North - Li Shangyin
/夜雨寄北 - 李商隐/
Night Rain Sent North - Li Shangyin
/夜雨寄北 - 李商隐/
『夜雨寄北』は、唐代の詩人・李商隠(りしょういん)が遠く離れた相手へ想いを寄せる情景を詩に凝縮した作品です。わずか四句の中に、離れ離れとなった二人の切ない気持ちと、再会への小さな希望が込められています。
冒頭で「君問歸期未有期」とあるように、相手がいつ戻ってくるのか尋ねられたところで、はっきりと答えられない現実を示し、その不確かさが詩全体に淡い寂寥感をもたらします。続く「巴山夜雨漲秋池」の句は、巴山(はざん)の地で夜を通して降り続く雨が秋の池を満たすさまを描写し、作者自身のやるせない心情や物悲しさを象徴的に暗示しているのです。
後半の「何當共剪西窗燭,却話巴山夜雨時。」では、いつの日にか離れた相手と西の窓辺で灯火をともにし、今のこの寂しさや雨の情景を語り合いたいという願望が示されます。ここでの“剪燭(せんしょく)”は、古来より「夜通し語らう」「心を通わせる」行為のメタファーとして使われてきた表現です。まさにロマンチックなイメージを呼び起こし、読者の心を温かくさせます。
唐詩の中には、相手への手紙や別離を主題とした送別詩など、多くの恋心や友愛を示す詩が存在しますが、本作はその中でも特に「待ち焦がれる想い」と「期待する再会のとき」を対比的に描いているのが特徴です。作者・李商隠の優美かつ繊細な語り口は、後世にも高く評価され、日本や朝鮮半島を含む東アジア全域で愛誦されてきました。
実際にこの詩は、別れの場面や遠方にいる相手を想う状況でしばしば引用・朗誦され、その情景を目に浮かべながら“帰れぬ苦しさ”と“いつかは必ず会えるという希望”を噛みしめるきっかけとなったのです。夜の雨音を聴きながら相手を思うという設定は、身近でありながら深い余韻をもって読む者の胸に迫ります。
• 離れた相手を想いつつ、帰期が定まらない切ない状況
• 巴山の夜雨による秋の悲哀と、そこに宿るロマン
• “いつか再会して長夜を語り合う”という希望的モチーフ
• 李商隠の繊細な言葉遣いが残す深い余韻と叙情性