赋得暮雨送李胄 - 韦应物
赋得暮雨送李胄 - 韦应物
赋得暮雨送李胄 - 韦应物
赋得暮雨送李胄 - 韦应物
この詩は、暮れゆく雨の情景を背景に、知人である李胄(りちゅう)を送る際の感慨を四句に凝縮して描いたものです。冒頭の「楚江微雨里」は、楚の地を流れる川に微雨がそぼ降る様子を示し、柔らかくも物寂しい雰囲気を巧みに演出しています。続く「建业暮钟时」で、建業(後の建康、現代の南京付近)に響く夕鐘の音が、あたりをさらに静謐でやや哀調を帯びた世界へと誘います。
三句目「漠漠帆来重」は、広大な水面に数多の帆船がゆっくりと集まる姿を描写しており、行き交う人や物資でにぎわうはずの風景を、あえて“漠漠”と表現することで、雨と暮色がもたらす閉塞的な空気を強調しています。一方、最終句の「冥冥鸟去迟」は、鳥が薄闇の中をゆっくりと飛んで行く姿をとらえることで、雨や夕暮れのせいで視界が曇り、動きまでもが鈍く感じられる情景を示唆しています。そこには、旅立っていく李胄への惜別の念や、簡単には言葉にしがたい感傷がにじみ出ているようにも読み取れます。
韦应物は官吏としての経験を持ち、自然と人間の情を調和させる穏やかな作風で知られています。本詩でも、雨と暮れの鐘、河と帆船、飛び去る鳥といった自然や時刻の変化を淡々と描きながら、心にわずかな余白を残す構成となっています。視覚や聴覚、そして心象に訴える短い言葉の中に、別れの寂しさや人生の流転といった普遍的なテーマが込められている点が大きな魅力です。
実際には、送別の場には定番とも言える“柳”や“酒”のイメージが登場することが多い唐詩の中で、この作品は雨や暮色、そして鐘の響きを組み合わせることで、より静寂で内省的なムードを作り出しています。その中で、作者もまた自身の官職人生や時の移ろいに想いを馳せ、李胄との別れを通じて世の儚さを噛みしめているのかもしれません。この深い余韻を味わうことこそ、本詩を読む醍醐味といえるでしょう。
・淡い雨と夕刻の鐘が描く別離の寂寥感
・帆船や鳥の動きに象徴される、ゆるやかに流れる時間
・韦应物独特の自然描写が醸し出す静謐で深い余韻