Long Yearning (Part One) - Li Bai
/长相思(其一) - 李白/
Long Yearning (Part One) - Li Bai
/长相思(其一) - 李白/
本作は唐代の詩人・李白(りはく)が、都・長安にて募る恋しさを歌い上げた連作詩『長相思』の第一首として知られています。冒頭の「長相思,在長安。」という象徴的なフレーズは、物理的には華やかな都にいながらも、心の中では遠く離れた存在を慕い続ける詩人の切実な思いを強調しています。続く部分では秋の虫鳴く冷えびえとした夜の情景や、霜が降りて竹むしろまで冷たく感じる描写が続き、ひとりぼっちの灯りの下で募る寂しさと望郷の念が重ね合わされています。
夜の闇の中で月を見上げる場面では、目の前の月の美しさと、自分の手が届かない場所にいる「美人(愛する人)」への思慕が対比され、ますます孤独感が増していきます。さらに、上空には青冥(せいめい)の高天が広がり、足元には緑水がうねるといった大自然の広大さが示されることで、自分の思いがどれほど途方もない距離を隔てているかが一層鮮明になります。
結末に至るまでに繰り返される「天は高く地は遠い」という宇宙規模のスケール感は、思い人に近づけない絶望感とともに、長安という華やかな都の喧騒とは対照的な、ひっそりとした孤独を表しています。「長相思,摧心肝!」という歎息は、心の奥底から湧き上がる嘆きの声。どれほど長く想っても届かないもどかしさと切なさに、胸が締め付けられるような余韻を残します。
この詩には、豪放磊落なイメージも強い李白が持つ繊細な感性が表れています。社会的な成功や名声よりも、身近な人への純粋な思いを最優先する姿勢や、広大な自然の中でかえって小さくなってしまう自分の存在を見つめる意識は、後の時代の詩人たちにも大きな影響を与えました。また、「月」をはじめとする中国詩歌の伝統的な意匠も効果的に取り入れられており、読者の心に深い印象を刻む作品となっています。
『長相思(その一)』は、ただの恋歌ではなく、作者自身の人生観や、都の象徴である長安で感じる根源的な孤独、そして遠くにある人や場所に対する果てしない憧れと哀惜を併せ持つ深遠な詩といえるでしょう。こうした多重的な意味合いが、古今を通じて多くの読者の心を捉えてやまない理由の一端です。
• 都・長安にいるにもかかわらず、遠く離れた存在への思慕が強調
• 秋夜の冷え込みや霜の描写が、孤独感をより際立たせる
• 大自然の広大さとの対比で、人間の思いの切なさが強調
• 李白の華麗な叙情性と繊細な感受性を味わえる名作