Climbing the Linyun Temple Pavilion in Jiazhou - Du Fu
/登嘉州凌云寺阁 - 杜甫/
Climbing the Linyun Temple Pavilion in Jiazhou - Du Fu
/登嘉州凌云寺阁 - 杜甫/
この詩は、杜甫(とほ)が嘉州(現在の四川省楽山市)にある凌雲寺の楼閣に登って詠んだとされる七言律詩をイメージしたものです。嘉州は名勝や歴史の深い仏教寺院が多く、なかでも凌雲寺は近くに世界遺産として名高い楽山大仏があることでも知られています。
冒頭の「古寺凌雲接太清」は、天空と触れ合うかのように高くそびえる寺院の姿を鮮明に描き、さらに周囲の山々や長江の眺望を通じて、その地がいかに壮大で神秘的な場所であるかを強調しています。寺の窓から見渡せば幾重もの峰が重なり合い、遠方には長江が水鏡さながらに光を放つ――こうした自然の雄大さが、杜甫の心を大きく揺さぶる要因となっています。
後半では、苔むした荒れ径や高閣から見下ろす絶景を通じて、詩人自身が長い旅路や流浪の日々を振り返りつつ、深い感慨を抱く様子がうかがえます。さらにもう一段登ってみれば、天地の広大さを一段と実感し、空を自由に飛び回る鳥のように心を解き放とうとする意識が表されています。杜甫はしばしば国事を嘆き、社会的なメッセージを込める詩を残しましたが、本作のように雄大な自然と仏閣の歴史が融合する場所では、その内面の憂いや疲れが一瞬でも昇華されているようにも感じ取れます。
『登嘉州凌雲寺閣』と題されるこの詩は、あくまで杜甫の自然賛美や心境を象徴的に示した作品として理解できます。神仏への崇敬が盛んだった唐の時代にあって、険しい山岳地帯に建立された寺院の楼閣で見上げる空はとりわけ荘厳なものであり、そこに身を置く詩人は日常の諸々から解放された一瞬の安息を得たと言えるでしょう。
• 嘉州(楽山)の雄大な自然と凌雲寺の高閣からの絶景を一挙に描写
• 長江と山々を見下ろす構図が、詩人の心の解放を象徴
• 苔むした古径や仏閣がもつ静謐な雰囲気が、杜甫の憂いを一時的に癒やす
• 唐代の仏教文化と風光明媚な景勝地が融合する格調高い山水詩の一例