Weicheng Song - Wang Wei
/渭城曲 - 王维/
Weicheng Song - Wang Wei
/渭城曲 - 王维/
王維(おうい)の『渭城曲(いじょうのきょく)』は、『送元二使安西(そう げん に し あんせい)』の別名としても知られ、古来「陽関三叠(ようかん さんじょう)」と称えられるほど多くの人々に愛誦されてきた送別詩です。
冒頭の「渭城朝雨浥輕塵」は、ほこりを鎮めるほどの朝雨が降ることで、空気が澄みわたり、次の「客舍青青柳色新」に描かれる青々とした柳がいっそう鮮やかに目に映る印象を与えます。こうした光景は、友を見送る場面に淡い寂寞感をも添えていますが、それを一気に盛り立てるのが続く「勸君更盡一杯酒」という句です。別れの直前の一時、もう一杯の酒を酌み交わそうという呼びかけは、友情を惜しむ気持ちと、いつまでも別れを先延ばしにしたいような切なさが入り混じった、特有の送別風情を表します。
結びの「西出陽關無故人」が示すのは、長安近郊を後にして西方の辺境へ赴く道すがら、頼れる友や知己は存在しないという現実。安西(あんせい)など遠くの地へ向かう者にとって、陽関を越えることはすなわち長安や故郷との別れを強いられ、長い流浪や任務の旅が続く合図でもありました。王維の詩は、その瞬間の惜別の情を、あくまで短い四句で鮮やかに凝縮し、長い歳月を超えて読み手の心を揺さぶり続けています。
この詩の親しみやすさと普遍性は、中国のみならず東アジア全域に広まり、友人の出発を見送る際にしばしば引用されるほどです。僅か二十文字足らずで、雨に霞む早朝の旅立ち、緑の柳並木、惜別の杯、そして茫々たる辺境への道という情景が次々に浮かび上がり、豊かな抒情性で読者を包み込みます。まさに送別詩の白眉と称えられる所以といえましょう。
• 雨で潤う朝の渭城の光景が、別れの情をいっそう惹起
• 酒杯を勧めるやり取りに濃厚な友情と名残の思いが表出
• 陽関を越えると旧友を見いだせない辺境の厳しさ
• 古来より歌に詠まれ、多くの送別の場面で愛誦された名詩