马诗二十三首(其五) - 李贺
馬詩二十三首(その五) - 李賀
马诗二十三首(其五) - 李贺
馬詩二十三首(その五) - 李賀
「馬詩二十三首」は、唐代中期を代表する詩人・李賀(りが)の連作詩であり、馬を題材に幻想的かつ叙情性豊かな世界を描き出しています。その第五首である本作は、龍の脊にも似た気高い馬の姿と、それを取り巻く白雲の風景が、わずか四句に凝縮されています。
冒頭では、馬体に“連錢文”のような模様が浮かび上がる様子が描かれます。連錢文は中国古来の貨幣にちなんだ円形の文様であり、龍の鱗や宝飾を思わせるイメージを想起させるものです。続く「銀蹄白踏煙」によって、蹄が白く光りながら煙を踏むという、現実離れした光景が一気に広がります。このように、馬自体が神話的な存在感を帯び、李賀特有の奇抜で幻想的な作風を色濃く感じさせます。
後半の「無人繫青塚,獨與白雲邊。」では、誰も馬を繋ぎ留める者がいない青塚(緑深い塚)と馬が独りで在る情景が描かれます。人里離れた場所で、天と地の境界をさまようかのようにたたずむ馬の姿は、詩人自身の孤高な精神や、世俗を離れた寂寥感を象徴しているとも解釈できます。李賀は、病弱かつ短命だったことから“詩鬼”と呼ばれ、現実と幻想、華麗さと陰鬱さを同時に描き出す作風を数多くの作品で示しました。本作もその一例で、馬を通じて現実の束縛から解き放たれた存在感を強烈に印象づけています。
わずか四行の中に、龍を思わせる威容、金属のように光る蹄、煙や雲など変幻自在な自然のモチーフが詰め込まれ、まるで神話世界を一瞬垣間見るかのような効果を生み出しているのが李賀の真骨頂です。彼の詩では、伝統的な詩題に神話的イメージや鮮烈な色彩感覚を交え、独特の詩境を創造する手法がよく見られます。馬は唐代において軍事や交通の要として非常に重視されていた存在ですが、李賀はそこにさらに神秘的な美しさや孤高の精神を重ね合わせ、単なる“物”や“軍馬”として描くのではなく、自らの内面世界を映す鏡のように扱っているのです。
本作を読むほどに、馬の豪壮さだけではなく、人が立ち入れない別世界の片鱗を感じさせる演出に心を奪われます。荒涼とした青塚のほとりで白雲と共に佇む馬は、一切の束縛を拒否し、詩的な理想郷を体現する象徴的存在です。李賀の作風の精華とも言える本作は、短い詩句ながらも奥行きが深く、時代を超えて人々を魅了し続けています。
・龍にも比される馬を通じ、孤高かつ神秘的な詩境を創造
・連錢文や銀蹄など、きらびやかで幻想的なイメージの多用
・青塚に繋がれず、白雲を相伴とする馬の超俗的存在感
・李賀特有の華麗さと陰鬱さが混在した“詩鬼”の筆致
・唐代の馬という日常的題材を、神話的・象徴的世界へと昇華する技巧