[古典名詩] 行路難(その一) - 勇敢に未来を切り拓く旅路の要点

A dramatic scene showing a lone traveler on a winding mountain path surrounded by towering peaks and turbulent clouds, symbolizing the challenges of life's journey. The atmosphere should feel both oppressive and inspiring, with soft golden light breaking through the mist to represent hope amidst adversity.

行路难(其一) - 李白

行路難(その一) - 李白(りはく)

逆境に挑み続ける決意と希望を描いた古代の詩

金樽清酒斗十千,
金樽の清酒は一斗につき値段は一万銭、
A golden goblet of fine wine worth ten thousand coins per dip,
玉盤珍羞直萬錢。
玉の器に盛られた珍味はまさに万の価値がある。
Rare delicacies on jade plates, truly worth thousands in gold.
停杯投箸不能食,
杯を止め、箸を投げ捨て、食も喉を通らず、
I set down my cup, throw aside my chopsticks, unable to eat,
拔劍四顧心茫然。
剣を抜き、あたりを見回しても心は茫然とするばかり。
Draw my sword, look around, my heart lost in confusion.
欲渡黄河冰塞川,
黄河を渡ろうにも氷が川を塞ぎ、
I wish to cross the Yellow River, but ice blocks the way,
將登太行雪滿山。
太行山に登ろうとしても雪に山は覆われている。
To climb the Taihang Mountains, but snow covers every peak.
閒來垂釣碧溪上,
暇を得ては碧い渓谷で釣り糸を垂れ、
At leisure, I fish in a clear stream,
忽復乘舟夢日邊。
ふと船を漕ぎ出せば日輪のそばを夢見るのだ。
Suddenly, I row a boat, dreaming of the sun’s edge.
行路難,行路難,
行く道は険しく、難しく、
The road ahead is difficult, the road ahead is difficult,
多歧路,今安在?
分かれ道も多く、いったいどこへ向かうべきか。
So many diverging paths—where can I go now?
長風破浪會有時,
いずれ長風に乗って波を破るときが巡ってきて、
Some day the wind will be strong enough to break the waves,
直掛雲帆濟滄海。
まっすぐ雲帆を掲げ、広大な海を渡ろう。
Then I’ll raise high the sail and cross the vast seas.

この詩は、唐代の詩人・李白(りはく)が詠んだ代表的な作品であり、人が人生において直面する困難と希望を壮大なスケールで描いたものです。前半では、豊かな酒と珍しいごちそうが並んでいるにもかかわらず、何らかの苦悩のためにそれを楽しめず、剣を抜いてあたりを見回しながら途方に暮れる姿が表現されています。これは外的な富や名声があっても、内面の悩みや人生の障害によって苦しむ人間の心情を象徴的に伝えていると考えられます。

次に、黄河の氷や太行山の雪という具体的なイメージを通して、「先に進みたくても自然の力で阻まれてしまう」状況を強烈に示しています。そうした行き詰まりや停滞感の中で、釣りをしたり舟をこいだりといった夢想の世界が現れますが、これは束の間の逃避であり、厳しい現実から離れたいという思いを象徴しているとも解釈できます。

しかしながら、この作品の真髄は終盤で「行路難、行路難」と繰り返したのちに示される「長風破浪会有時、直掛雲帆済滄海」に集約されています。ここでは、いかに道が険しくとも、いつの日か大きな風が吹き、困難を打ち破って大海を渡ることができるはずだという強い楽観と決意がうたわれます。唐代の社会背景や李白自身の放浪的な人生観を踏まえると、この詩が「自分の才能や志を自由に発揮して、大いなる未来へ突き進む願望」を強く表していることがわかります。

全体としては、豪放磊落な李白の気質とともに、挫折や苦悩に沈みつつも、最後には希望と大志が力強く打ち出される構成になっています。このコントラストが読む者に深い共感と勇気を与え、多くの人々に今なお愛される理由のひとつとなっています。人生には多くの選択肢や障害があるものの、いつかは大きな波を乗り越えられるというメッセージが込められているため、時代や地域を越えて人々の心を揺さぶり続けてきたのです。

まとめると、「行路難(その一)」は人生における苦境とそれを超えようとする熱い情熱の詩といえます。金や名誉に囲まれていても、進むべき道が見えなくなる時がある。しかし、自分の信念や希望を失わずにいれば、最後には雲帆を掲げて広大な海を渡るように、大きな夢を実現できると説いているのです。このように、李白の奔放さがストレートに表現された名作であり、苦難のときにこそ読み返したい一首でもあります。

要点

• どれほどの困難に直面しても、いつかはそれを超える可能性がある
• 富や名声があっても、人間は内面的な苦悩から逃れられない
• 最後に示される力強い楽観は、李白ならではの豪胆さを象徴
• 現実の苦境を描きつつ、大きな夢と希望を失わない姿勢を学べる

コメント
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