登高 - 杜甫
登高(とうこう) - 杜甫(とほ)
登高 - 杜甫
登高(とうこう) - 杜甫(とほ)
『登高』は、杜甫(とほ)が晩年の困窮と憂いを深く映し出した代表的な詩のひとつです。秋の景色を描写しながら、人間の抱える苦難や内面的な悲しみが巧みに織り込まれています。
冒頭の「風急天高猿嘯哀」は、秋の高空と猿の鳴き声の対比によって、広大な自然に取り残されるような寂しさを引き立てます。次に渚や白い砂の上を鳥が飛び交う情景が描かれ、依然として世界は美しく雄大でありながら、詩人自身の心中には深い陰りがあることを暗示します。
続く「無辺落木蕭蕭下,不尽長江滾滾来」において、果てしなく散り落ちる木の葉と、絶え間なく流れる長江が並置されることで、天地の循環と人間の儚さが強くコントラストをなします。杜甫はここで、自然の大きな営みに対する個人の無力感を深く嘆じているのです。
さらに「万里悲秋常作客,百年多病独登台」の句で示されるように、いつも旅や流浪を強いられ、年を重ねるごとに病にも苛まれている状況は、まさに杜甫自身の晩年の姿と重なります。若き日は理想に燃え、詩才をもって王朝に仕えようとした彼でしたが、安史の乱などの動乱を経て官途は思うようにいかず、たび重なる不遇と病に苦しめられました。
結句では、「艱難苦恨繁霜鬢,潦倒新停濁酒杯」という現実を直視した一節が登場します。白髪が増え、酒を飲む気力さえ失うほどに疲弊した心身の状態がありありと伝わってきます。杜甫はしばしば「詩聖」と呼ばれ、社会や時代の問題を鋭く捉えた作品が多いのですが、『登高』では社会批判よりもむしろ、人生を振り返る達観と諦念、そして深い悲しみが前面に出ています。
結果として、この詩は唐詩のなかでも格調高く、かつ哀切な情感を強く湛えた名作となりました。秋の眺望を通じて、人間の運命や無常を痛切に感じさせるこの作品は、時代を超えて多くの人々の共感を呼んでいます。
• 秋の自然描写が、詩人の孤独と憂愁を際立たせる
• 歳月と病、そして動乱による不運が杜甫の苦悩の背景
• 散りゆく落葉と絶え間ない長江の流れが人生の無常を象徴
• 社会批判にとどまらず、個人の深い悲嘆と達観が融合した唐詩の名作
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